感染症・感染対策専門出版

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ケア環境別 できる感染対策
 急性期病院・慢性期病院・在宅
 Q&Aで学ぶ ケア環境別感染防止のポイント

 ●高度急性期,急性期,回復期,慢性期,在宅といった医療環境ごとに,
  現場でできる感染対策をズバリ解説!
 ●地域の病院間連携における相互理解,情報共有にも役立つ1冊!!
 ●ケア環境ごと感染対策の素朴な疑問をQ&A形式でズバリ解説!

 著 者:矢野邦夫(浜松医療センター)
     埋田聖子(浜松市リハビリテーション病院)
 定 価:3,300円(本体3,000円+税10%)
 判 型:B5判 176頁(2色刷)
 発行日:2014年11月1日
 ISBN978-4-906844-07-4


目次

Ⅰ . 手指衛生
 手洗いと手指消毒
  Q1 どんな時に手洗いをして,どんな時に手指消毒をしますか?
  Q2 石鹸と流水による手洗いとアルコール手指消毒はどちらのほうが効果がありますか?
  Q3 仕事中ですが,排尿だけなので石鹸を使用しなくてもよいですか?

 手指の管理
  Q4 手に傷があって,絆創膏を貼っていますがよいですか?
  Q5  常にハンカチを持って働いています。自分のトイレ後,ハンカチを使って手を拭いてよいですか?

 容器の管理
  Q6 手指消毒用のアルコール製剤は容器に継ぎ足してよいですか?
  Q7  手を洗う際,固形石鹸ではなく,液体石鹸であれば,そのまま容器に継ぎ足ししてもよいですか?

Ⅱ . 個人防護具
 個人防護具の着用について
  Q8  隔離部屋の個人防護具(PPE:personal protective equipment)は,どこで着用し,どこで外せば…
  Q9 点滴交換のための入室でも個人防護具(PPE)は必要ですか?
  Q10 病原体によって,個人防護具(PPE)の着用などの感染対策は異なりますか?

 手袋
  Q11  器材の洗浄中に手袋が破れてしまった場合,面倒くさいので,手袋交換をしなくてもよいですか?
  Q12  点滴を作成する時や血管内カテーテルを血管内に留置する時に手袋を装着していませんが,それで…
  Q13 手袋の上からアルコール消毒すれば,手袋を交換しなくてもよいですか?
  Q14  手袋を外す時,片方の手で手袋の裾を持つと汚れた部分が手に触れて手や手首が汚れてしまいます。…

 マスク
  Q15 マスクをつけるのはどんな時ですか?
  Q16  マスクをつけて患者に対応すると,不愉快な思いをさせてしまうかもしれないので,マスクを…
  Q17  マスクをつけていると,暑くて汗をかいてしまうのでマスクを外してもよいですか?
  Q18  サージカルマスクを2 枚重ねて装着しているスタッフを見かけたことがあります。1 枚よりも…

 ゴーグル
  Q19  隔離の時「ゴーグルをつけてください」と言われますが,患者がどのような症状の時にゴーグルを…
  Q20 病室で使用したゴーグルは毎回交換したほうがよいですか?

 ガウン・エプロン
  Q21  喀痰からMRSA が検出されています。検温だけなら個人防護具(ガウンなど)は装着しなくても…
  Q22  エプロンはどのような場合に装着し,エプロンを使用したあとにはどのように取り外したらよいですか?

Ⅲ . 病原体別
 MRSA
  Q23 入院・転院の患者全員にMRSA の検査をしていますが,これは必要ですか?
  Q24 MRSA の患者の身体を拭いたタオルはどのように処理すればよいですか?
  Q25  MRSA の患者に,個室が確保できない場合,大部屋のカーテンを閉じて対応していますが,病室の…
  Q26  気切部の喀痰からMRSA が検出されている患者には,吸引時どのように対応すればよいですか?

 インフルエンザ
  Q27  インフルエンザにかかった場合,どの程度仕事を休まなくてはいけないですか?
  Q28  インフルエンザを疑う患者が外来受診をする場合,どのような対応をしたらよいですか?
  Q29 同居の家族がインフルエンザになったのですが,自分は働いてもよいですか?

 ノロウイルス
  Q30  アルコールはノロウイルスに効果がないと聞きました。手指消毒には,アルコールの代わりに次亜塩素…
  Q31 ノロウイルス胃腸炎の患者が使用した便座はどのようにしたらよいですか?
  Q32 ノロウイルス胃腸炎の患者の排泄物で汚染したリネンはどのように処理したらよいですか?
  Q33 ノロウイルス胃腸炎の患者が嘔吐しました。吐物はどのように処理したらよいですか?
  Q34  職員がノロウイルス胃腸炎にかかって休んでいます。どれくらいの期間休んだら働けますか?

 結核
  Q35  結核の患者の部屋は個室ですが,カーテンのみ閉めています。ドアは閉めなくてもよいですか?
  Q36  保健所から入院患者に「1 ヵ月前に入院していた病院で,同室者から結核が発生したので,接触者健診…

 疥癬
  Q37 通常型疥癬の患者には,隔離は必要ですか?
  Q38  角化型疥癬の患者を隔離しました。どのような個人防護具を装着したらよいですか?
  Q39 角化型疥癬で隔離中の患者のリネンはどのようにしたらよいですか?
  Q40 疥癬の潜伏期間と言われる30 日を過ぎて疥癬が発症しました。なぜですか?
  Q41  職員(医療従事者)が疥癬と診断され,イベルメクチン(ストロメクトール®)を内服しました。…

Ⅳ . 処置別
 オムツ交換
  Q42 オムツ交換の時,手袋を2 枚重ねて装着してよいですか?
  Q43 1 回の手袋装着でフロアの患者全員のオムツ交換をしていますが,よいですか?

 経管栄養
  Q44  喀痰がMRSA 陽性の患者が使用したコップ,スプーン,口腔ケア物品を病棟内で洗浄して,共有して
  Q45 経管栄養終了後,栄養セットの取り扱いはどのようにしたらよいですか?
  Q46 経管栄養を作成する時には手袋は必要ですか?

 気管吸引
  Q47 気管孔から喀痰などを吸引する吸引カテーテルは何回も使用してよいですか?
  Q48 気管吸引カテーテルの通水の水は水道水でもよいですか?
  Q49  吸引時,吸引カテーテルは個別に取り替えていますが,吸引びんと吸引チューブは,隣の患者と共有して…

 気管カニューレとスピーチバルブ 
  Q50  気管カニューレ(複管タイプ)の内筒の管理はどのようにすればよいですか?
  Q51  気管切開孔に挿入していたスピーチカニューレのスピーチバルブの装着が甘かったので,咳込みと…

 加湿器
  Q52 「 加湿器を家から持ってきて使いたい」と患者の家族から要望がありますが使ってもよいですか?
  Q53  加湿器に使用する水に,カビ防止や消臭のために,水と一緒に次亜塩素酸ナトリウムを投入しても…

 採血・血管内留置カテーテル
  Q54 駆血帯を使った後はどのように処理したらよいですか? 
  Q55  患者がアルコールにアレルギーがあるのですが,採血時の皮膚消毒は0.02%のクロルヘキシジン…
  Q56  明日の手術予定の患者ですが,手術当日は忙しいので,前日から末梢静脈カテーテルを留置して…
  Q57 マキシマル・バリアプリコーションとは何ですか?どんな時に必要ですか?

 尿道留置カテーテル 
  Q58  尿道留置カテーテルは閉鎖式システムと開放式システムではどちらがよいですか?
  Q59 尿道留置カテーテルと間歇的導尿ではどちらが有効ですか?
  Q60 尿道留置カテーテルは1 ヵ月で交換してよいですか?
  Q61 膀胱洗浄は行ってよいですか?
  Q62 尿道留置カテーテルが挿入されたまま,お風呂に入ってもよいですか?
  Q63 尿バッグの排出口の先端の消毒は必要ですか?
  Q64 検体採取のための採尿はどのようにすればよいですか?

Ⅴ . 生活器具・環境
 生活器具
  Q65 爪切りで爪を切った後,爪切りは,どのように片づければよいですか?
  Q66  シェイバーでひげ剃りをした後のひげやシェイバーはどのように片づければよいですか?

 環境
  Q67 病室のカーテンの消毒は必要ですか?
  Q68 感染症患者が共有のトイレを利用する場合,どこまで消毒したらよいですか?
  Q69  便器・尿器・ポータブルトイレなどの排泄物容器はどのように洗浄したらよいですか?またその排泄物容器…
  Q70 吸引びんやポータブルトイレのバケツなどは消毒しなくてよいですか?
  Q71  キッチンハイター® でノロウイルスや血液の清拭をしていますが,それでよいですか?
  Q72  環境消毒や洗濯に次亜塩素酸ナトリウムを用いることがありますが,その濃度は書籍やガイドラインに…
  Q73  MRSA,緑膿菌,ESBL 産生菌が検出されている患者の病室(ベッド柵や床頭台等)の環境整備には…

Ⅵ . その他
 血液・体液曝露
  Q74  患者に使用した注射針を指などに刺した場合「心臓より高くして,血液を絞りだすとよい」というのは…
  Q75  患者の血液が付着した注射針で針刺しし,創部を石鹸と流水にて洗い流しました。今後はどうすれば…
  Q76  患者に咬みつかれてしまい,出血してしまいました。患者の感染症の有無はわかりません。どうすれば…

 ワクチン
  Q77  麻疹・風疹・耳下腺炎・水痘のうち麻疹のみ抗体がなくワクチンを接種するようにいわれました。特に…
  Q78  インフルエンザワクチンは,昨年接種したので,今年は接種しなくてもよいですか?
  Q79  過去にHBs 抗体があったのですが,抗体価が減少してしまい,現在は検査しても検出されなくなってしまい


内容見本


はじめに

 現在,医療機関では医療の機能分担が求められてきており,病棟単位で医療機能を明示する方策がとられ始めています。医療機能には,「高度急性期機能」「急性期機能」「回復期機能」「慢性期機能」があります。1 つの病院が急性期機能および回復期機能を持つ病棟を抱えることは十分にありますが,(高度)急性期機能にシフトしている病院や回復期・慢性期機能に重点を置く病院の方が多いと思います。
 (高度)急性期病院では回復もしくは改善が見込まれる患者に対して,集中的なケアを提供しており,高度なテクノロジーが不可欠です。回復期・慢性期病院は(高度)急性期機能病院で確立したケアプランを実施し,慢性状態を評価しているので,患者が何ヵ月も滞在することがあります。そのため,低テクノロジーであるものの,快適であり,かつ尊厳および患者権利が守られていなければなりません(Smith PW,et al. Am J Infect Control 2008; 36: 504-35)。
 院内感染については,回復期・慢性期病院においても(高度)急性期病院にみられるような感染症が発生することがあります。しかし,回復期・慢性期病院でも(高度)急性期病院と同レベルの感染対策が絶対に必要かというと,必ずしもそうではありません。(高度)急性期病院では脆弱で感染症を合併すると重篤になりやすい患者が入院しています。回復期・慢性期病院では比較的安定して,病原体を保菌しても何とか耐えられる患者が多く入院しています。また,支払いシステム,検査やレントゲンの利便性,看護- 患者比などが異なり,資金源からみても(高度)急性期病院で行われている感染対策をすべて実施することは非現実的です。やはり施設の規模,財源,病状,地域の感染の問題に基づいて変更・適用していくことが大切です。
 本書は感染対策についての疑問を「(高度)急性期病院」「回復期・慢性期病院」「在宅」の立場でそれぞれ回答するようにしました。「(高度)急性期病院」での感染対策は米国疾病管理予防センター(CDC:Centers for Disease Control and Prevention)のガイドラインを参考にしていますが,「回復期・慢性期病院」「在宅」での感染対策は現在の日本における状況を鑑みて一つの意見として提示しました。回復期・慢性期病院といっても患者の状況は異なっているので,臨床現場ではさらに現状に合わせて感染対策を構築していただきたいと考えます。
 本書が回復期・慢性期病院における感染対策の座右の書になることを希望します。最後に,このような企画を提示していただいた(株)リーダムハウスの多賀友次氏に心から感謝の意を表します。

2014 年10 月吉日

浜松医療センター 矢野邦夫
浜松市リハビリテーション病院 埋田聖子